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    美容師インタビュー | 2018.01.17

    スタイリストとして、オーナーとして、どこまでも誠実に【「Cirrus」「novem by Cirrus」上田義人さん】

    ヘアドレPressをご覧のみなさま、こんにちは!
    ヘアドレPress編集部の仲西です。

    突然ですが、みなさんは初めてのヘアサロンって得意ですか。

    わたしは苦手です。もう、すっごく苦手。

    たかがヘアスタイル、されどヘアスタイル。
    今日のカットのできばえが向こう何ヶ月かの自分の印象を左右するかと思うと、ちゃんとこちらの希望を伝えられるだろうか、希望どおりに切ってもらえるだろうかと緊張してしまいます。
    自分のルックスに100%自身のある人なんてそうそういないと思うと、緊張はなおさらですよね。

    今回お話しをお聞きしたのは、二条城近くのサロン「Cirrus」と、町家を改装した小粋なサロン「novem by Cirrus」のオーナーの上田義人(うえだ よしひと)さん
    こちらは緊張の面持ちでお話を伺いに行ったのですが、とても温かい雰囲気で迎えていただきました!

    ヘアデザインはなまもの?

    現在は「Cirrus」「Novem by Cirrus」2店のオーナーをなされていますが? 

    京都市の西京区に生まれて、高校卒業までそこで育ちました。そのあと上桂のヘア―スニップというところに就職させていただいて、美容学校の通信課程で勉強したりしながら、10年間勤めました。
    その後28歳のときに独立開業をして、京都市の二条エリアで「Cirrus」というサロンをオープンしました。
    開業してちょうど5年目の一昨年、2店目となる「novem by Cirrus」を市役所エリアにオープンしました。
    去年の9月に法人化をして、株式会社Ci(シーアイ)として両店舗を経営している形になっています。

    (ナチュラルアンティーク調の「cirrus」と京町屋を改装した「novem by cirrus」 異なるテイストの2店舗を運営)

    独立前後で変わったことは?

    10年前ぐらい、23とか24のときにコンテストに集中する時期があって、そのときにメーカーさんのフォトコンテストであったりとか、三都杯(関西で最も難易度が高いといわれるコンテスト)であったりとか、JPAっていうパーマ協会のコンテストによく出させていただいて、そこで入賞とか、ファイナリストだったりとか、そういうのは頂いてきました。

    そういう時期が一段落ついて、独立したんですが、今度は今までやってきたことを、お客様に還元するだけではなく、ほかの美容師に伝えていかなきゃならないと思うようになりました。
    そんな気持ちから、講師活動であったりとか、写真撮影のレクチャリングとかもさせてもらっています。

    写真撮影の技術はどうやって身につけたのですか?

    (独学で学んだという撮影技術。今では他のサロンへのレクチャ-を依頼される程の腕前に!)

     

    独学ですがネット媒体で使う写真の撮影なども全部自分でやるようにしてるんです。
    自分でこだわってやっているうちに、レクチャーを依頼されるようになりました。

    写真はもともと趣味だったとか? 

    よう聞かれるんですけど、趣味ではまったくやらなくて……(笑) 風景とか、いいなーと思いますけど、それよりはなんか変な表現なんですけど、生きてる人がいるほうが、生気を感じるんですよね。

    これはヘアカットとも通じていて、髪の毛とかでもそうなんですけど、ヘアデザインってナマモノやと思ってて。
    そのときその瞬間を切り取りたいんですよ。
    風景も確かにその場限りのものではあるんですけど、そこにもやっぱりもっと生命を感じたいというか……。
    すごい曖昧な表現にはなるんですけど、そんな感じです。

    もともとそういう髪型だった、と思わせるヘアデザイン──上田さんの「デザインの小窓」とは? 

     

    ふだんのお客様とのコミュニケーションのなかで大切にしていらっしゃることは?

    新規のお客様はとくにそうなんですけど、おたがい知らない者同士なので、出会えたのもひとつの縁かな、ってすごく感じます。
    だからこそ、この人の言いたいこととか、感じている部分を最初に全部引き出したいな、って思うんですね。

    僕がヘアデザインにおいてテーマにしていることのひとつに、「人の空気をデザインする」っていうのがあるんです。
    ボブでもロングでもショートでも、なんでもいいんですけど、ヘアデザインを用いてその人から湧き出る空気感みたいなものをデザインしたくて。そのために、その人自身の言葉の裏側にあるものを感じ取りたいです。

    もうひとつが、その方にとっての「デザインの小窓」を用意する、っていうことなんです。
    日々美容師として働いている以上、他の仕事をされている人よりも美容に関する専門的な知識はあるはずだし、それをもとにいろんな提案ができるはずなんです。
    この人がもっときれいになるためには、とか、もっと素敵になるためには、とか。
    保守的なお客様も多いですけど、ここをこうしたらもっと素敵に見えますよ、もっとこうなりますよ、みたいな、その人の可能性の幅を広げるものを用意したいと思っています。
    それを僕は「デザインの小窓」って呼んでいます。
    そのために、もっともっとお客様が言語化できていないことを聞き出して、言葉に直してしっかりと提案してあげる、っていうことを常に心がけています。

     

    緊張してこられるお客様のために、心がけていらっしゃることはありますか?

    お店の雰囲気作りとかももちろんあるとは思うんですが、一番気にしているのは、言いたいことをまず全部聞いて、それを言葉に訂正して直していって、ということですね。

    それから、相手の話すスピードにまず合わせていく、っていうこと。
    表情であったり、声のトーンであったり、呼吸を見て、呼吸を合わせていく。
    待合に新規の方がいて、そこからフロアに来るときの歩き方、字も見ます
    わりと字って人間性が出ると思うので、柔らかい字を書く人なのか、殴り書きで書かはる人なのか、きっちり間隔揃えて書かはる人なのかで、話し方、対応を変えています。

     

    文字で性格を予想するんですか!?
    じゃ例えばこのわたしのノートの文字はどんな印象ですか?

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    (突然の私の無茶ぶりに、しばし考える上田さん・・・)

     

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    んー(笑) まず、真面目な方なのかなって思いますね。
    で、たぶんあんまり決まってないんやろな、とう感じ。
    ヘアデザインを『どうしたらいいですか』ってたぶん言ってくれるタイプの方かな、と。

    !

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    悩みとかも、はじめはたぶん何も言わへん人なんですけど、掘り下げていったら結構出てくるタイプで。
    『え、でもこれってこうなんじゃないですか?』ってこちらが言ったら、
    『ああ、はいはいそうなんですけど、でもこうでしょ?みたいな。

    !!!!

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    うん、そう、『でも』が多いタイプかな……(笑)

    あたってます(苦笑)

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    文字以外だと、お洋服も見ます。
    お洋服の感じから見て、この人って多分こういう系の方だからこういうカウンセリングに持っていったほうがいいのかな、みたいな。
    実際話してみるとギャップがある人ももちろんいるんですけど、ギャップが出るってことは、変身願望を持ってる方なのかなあ、とか、話しながらペースを掴んでいってますね。

     

    お客様のすごいいろんな面を見ていらっしゃるんですね。

    基本的に、ヘアデザインって「最後」だと思ってるんですよ。
    ファッションがあって、ライフスタイル、歩き方、字の書き方があって、じゃあそこにフィットするヘアデザインってどんなだろうなあ、って。

    同じボブでも「角」を作ったほうがいいのか「ライン」をつけたほうがいいのかなとか……。
    柔らかい感じの話し方をされる方ならどちらが似合うか、例えばすごく仲の良いお友達の方と会ったときに、こんなに柔らかい話し方をされる人が、すっごいモード色の強いラインが出てる、ってなったときに、たぶん違和感しかないやろな、って思うんですよね。

    僕にとって理想的なのは、違和感のないヘアデザイン
    女性は女性らしく、男性は男性らしくっていうことでもあるんですけど。
    正直なところ、どんなヘアデザインかということよりも、もとからその人がそういう髪型、そういうヘアデザインをしていた、って感じられるようなヘアデザイン、いうのが最大のテーマです。

     

    あえて作った感じがしない、ということですか?

    そうですね。そこにすごく魅力を感じます。
    アシンメトリーとか、奇抜な髪型も世の中にはもちろんありますけど、そのアシンメトリーですら、その人がもともとその髪型をしていた、っていうところまでもっていけたら、いいなって思うんですよ。

     

    自分の記憶にないものを作る

    コンテストなどでのクリエイション活動の経験は、どういうところで活かせていますか? 

    集中力ですね。アイディアをヘアデザインに落とし込むとき、やっぱりすごく深く考えるんですよ。
    その考えていく時間が、自分にとってすごくよかったなって思います。
    僕、基本的に一人が好きなんですね。
    自分と対峙する、自分と向き合うという体験は、クリエイションから得たもので、サロンワークに活きてるかどうかは別にしても、いろんなことを考えられるようになったのはよかったですね。

     

    上田さんにとって「クリエイティブ」とは?

    自分の記憶にないものを作る、っていうことが、クリエイティブやと思うんですよ。

    たとえば映画に出ている女優さんのヘアスタイルだったり、写真集やアート作品のなかのヘアスタイルだったりとか、そういう記憶の中にあるものでしか自分って表現できないんですよ。
    でもそこからさらに考えていくと、記憶にあるものをさらに昇華させて、新しい要素を入れたり削ったりもして、見たことのないものを作るっていうのが、最大のクリエイションやと思っていて……。
    ゼロをイチにするイメージそこが僕は最大のクリエイティブだと思ってるんですよね。

    サロンワークも同じで、今まで見たことのないサロンワークがしたいと思っています。
    自分が想定し得るサロンワークって、それは記憶の中にあるサロンワークなんで、そうではなく記憶にない、もっと新しいサロンワーク、もっと革新的なサロンワークをお客様に提案していきたいと思っています。

    (上田さんのデザインするクリエイティブスタイルとサロンスタイル)

     

    上田さんとCirrusのこれから

    最後に、上田さんにとって、サロンのお仕事とは?

    そうですね。
    美容師さんって、楽しくおしゃべりされる方ってたくさんいらっしゃるんですけど、僕まったく無理なんです。盛り上げたりとか無理なんです。
    カウンセリングではもちろんしっかりしゃべらせてもらいますけど、プライベートのことはそこまで聞いたりはしなくって。
    恥ずかしいんですね、単純に(笑)。

    でもそんな自分でも、他では得られない満足を感じてもらえるようなサロンワークを目指しています。

    うまくしゃべれないぶん、字であったりとか、お洋服だったりとか、メイクバランスであったりだとか、お店に入ったときの受け答えであったりとか、雑誌の読み方とか、足組むか組まへんかとか、まわりの情報を観察して。
    なるべくたくさんのヒントを貰います。

    そこから得られた情報をもとに、会話は少なくてもお客様の気持ちを先回りするような、「ヘアデザイン」や「おもてなし」として実現していく感じですね。

     

    オーナーとしては?

    サロンのことでいうと、店舗展開は考えています。
    スタッフが増えていって、みんな技術を習得していく、ってなっていったら当然、出店につながるはずなので。
    それをどんなタイミングでやるか、っていうことが、ポイントかなと思っています。

    Cirrusっていう名前を聞いたときに、どう思い出していただけるかな、っていうことをつねに考えています。
    思い出していただけるサロンになりたい。
    ヘアメニューはもちろんですけど、心地いい時間を体験してほしい、生活の一部になるくらいまで、サロンとして昇華できたらいいのかな、っていうふうに思ってます。

    いかがでしたでしょうか。

    とても誠実にお仕事と向きあっていらっしゃる上田さん。
    お話を聞くなかで、何度も言葉を探すように、ニュアンスを少しづつ変えながら自分の想いを伝えようとする姿勢は、クリエイションにおける成果や日々のサロンワーク、そしてお店の佇まいにも表れているのかもしれません。

    京町家を広々と改装した店内はスタッフの心遣いで行き届いていました。
    これが上田さんのいう「心地いい時間」だと実感しました! 

    それではまた次回。ありがとうございました!

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